ICP-OES(ICP-AES)とは?多元素分析の原理・前処理・結果の読み方

3行要約
試料中の元素をプラズマで励起し、その発光から種類と濃度を調べます。
水や酸分解液などの溶液を用いた多元素分析に向きます。
元素の濃度は求められても、もとの化合物・結合状態は原則として決まりません。

機器名・略称 ICP発光分光分析装置(ICP-OES/ICP-AES)
測定対象 測定法に適合する溶液中の金属・その他の元素
試料例 工業用水、めっき浴を適切に希釈した液、材料を酸分解した液
結果の例 元素別の発光強度・検量線・元素濃度

1. どんな分析機器?

ICP-OESは、誘導結合プラズマ(ICP)を光源として、元素ごとに固有の発光波長を測定する装置です。ICP-AESとも呼ばれます。一般的な溶液分析では試料を細かな霧としてプラズマへ導入します。

分析するのは元素の発光であり、たとえば「その金属元素がどれくらい含まれるか」を調べる手法です。試料に元々どの化合物として含まれていたかは通常判別できません。

2. どんなときに使う?

原材料に含まれる金属元素の検査、製造工程の溶液管理、水質・環境試料中の多元素の測定などで利用されます。複数元素を同一分析の中で評価したい場面に向いています。

固体材料は原則として適切に分解・溶解して測定することが多く、測定前処理で失われる成分や溶け残りに注意が必要です。直接固体導入などの特殊構成は、一般的な溶液導入装置と区別します。

3. 分析には何が必要?

試料溶液の調製、酸・水・標準液・ブランク、必要に応じて内部標準や品質管理試料を用意します。主な設備はアルゴン供給、プラズマトーチ、ネブライザー、スプレーチャンバー、分光器、検出器、適切な排気・廃液設備です。

高濃度塩や有機溶媒を含む液は、導入系の汚染やプラズマへの負荷を考慮して希釈、分解、適切な装置条件などを検討します。酸分解は試料と安全要件に合った手順を使います。

4. どんな仕組みで分析する?

試料液を噴霧してプラズマに導入し、原子・イオンからの発光を分光して検出します。各元素の候補は発光波長、定量は標準液と比較した発光強度などから判断します。

同じ元素でも複数の発光線があるため、干渉の少ない波長を選ぶことが重要です。

試料調製・噴霧 → アルゴンプラズマで励起 → 発光を分光・検出 → 元素濃度を計算

図:一般的な測定手順の独自模式図(特定メーカーの構成図・実測結果ではありません)

5. 分析すると何が分かる?

ICP-OESの発光スペクトル模式図元素固有の発光線の位置と強度を見る
波長(nm・架空の範囲)発光強度(任意単位)318327発光線A近接した発光線発光線B模式図・架空データ。元素名や定量値を示すものではありません。
スマートフォンでは図を左右にスクロールできます。 ICP-OESの発光スペクトルの読み方(当サイト作成・架空の信号)。ピークの波長は元素判定の手掛かりとなりますが、近接する発光線の干渉に注意が必要です。

結果は元素ごとの発光スペクトル、選択波長の信号、検量線、試料中濃度として示されます。濃度の解釈にはブランク、希釈倍率、検量範囲、前処理回収率などが必要です。

発光線の識別は定性の手掛かりになり、定量では測定条件に適した標準物質を用います。検出されなかった元素を「絶対に存在しない」とは扱いません。

同じ元素を別の波長で測ると値が変わる?

ICP-OESでは、同じ元素に複数の発光線があるため、測定波長によって共存元素の影響が異なります。例えば近くに別元素の強い発光線が重なると、対象元素の濃度が実際より高く算出されることがあります。候補波長を比較し、背景補正や干渉補正の要否を確認します。

また、固体を酸などで溶液化した場合、結果はその前処理で測定液に移った成分を反映します。難溶性成分が残る条件では、固体試料全体の元素含有量と同一視できません。測定前に「溶存成分を知りたいのか、全含有量を知りたいのか」を決め、目的に合った前処理と品質管理を行います。参考:島津製作所:ICP発光分析の分光干渉対策、JAIMA:ICP発光分光分析の原理と応用。

6. 何が分からない?苦手なことは?

他元素の発光線が近接するスペクトル干渉、試料組成による発光強度の変化、分解・前処理での汚染が結果に影響します。適切な波長の確認、補正、添加回収試験などが必要な場合があります。

金属の酸化状態・結合状態、元素がどの分子に属するかは通常分かりません。測定下限と定量範囲は元素・波長・装置条件・試料に依存します。

7. 使用時の注意点と維持管理

アルゴン流量、冷却・排気、酸に接する流路やトーチの状態、ネブライザーの目詰まりを点検します。溶液の塩析や高濃度試料の持ち込みを避け、ブランク・品質管理試料でドリフトを監視します。

プラズマ、高温部、酸・廃液、高周波電源の危険性があるため、取扱説明書とSDSに従います。消耗品やアルゴン使用量が運用費に影響します。

8. 似た分析機器との違い

ICP-MS:元素のイオンを質量電荷比で測る方式で、発光を測るICP-OESとは検出原理と干渉の種類が異なります。AAS:原子の吸光を測るため、元素数・測定目的・必要な濃度範囲を比較します。

XRF:固体を非破壊で調べたい場合に候補になりますが、試料の均質性や定量条件が異なります。

代表メーカー・現行機種

2026年10月28日に初回確認し、2026年10月31日にメーカー公式製品ページへの掲載を再照合した一例です。島津製作所「ICPE-9800シリーズ」。公式掲載の確認であり、最新発売日や購入可否の確認ではありません。

参考文献・出典

  1. JAIMA「誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置の原理と応用」(確認日:2026年10月28日)
  2. 島津製作所「ICPE-9800シリーズ」 製品公式ページ(確認日:2026年10月28日)

関連機器・兄弟サイトへのリンク

XRF(蛍光X線分析)は固体を中心に比較的少ない前処理で元素を調べる手法です。溶液導入のICP-OESとは試料準備や定量条件が異なります。

ICP-OESとICP-MSの測定原理や選び方は、似た分析機器の違いを比較するを参照してください。固体を酸分解して測る場合と、溶液のまま測る場合など、試料の状態による違いは試料の状態から探すで整理しています。

最終検証日: 2026年10月31日(主要な科学説明・独自模式図・公式製品掲載情報を編集部で照合)。外部専門家による独立査読ではありません。製品の発売日や現在の受注・販売条件は未確認です。

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