SEMとは?走査電子顕微鏡の用途・画像の見方・試料準備を解説

この記事で分かること(3行要約)

  • SEM(走査電子顕微鏡)は、細く絞った電子線で試料を走査し、表面付近の微細な形を画像として観察する装置です。
  • 金属の破面、粉末の形、樹脂表面の傷などを観察できますが、試料の状態や導電性によって前処理が変わります。
  • SEM画像だけでは化学物質の名前や元素組成は確定しません。元素分析にはEDSなどの追加装置・条件が必要です。

機器名/略称: 走査電子顕微鏡/SEM(Scanning Electron Microscope)
何が測れるか: 試料表面付近の形状・凹凸、粒子や欠陥の外観、条件を整えた画像上の寸法
試料例: 金属破面、セラミックス、粉末、樹脂表面、薄膜表面
測定結果の例: 二次電子像(SE像)、反射電子像(BSE像)、スケールバー付きの観察画像
代表的な利用場面: 異物・破損原因の調査、材料表面の比較、製造ロットの外観評価

1. どんな分析機器?

SEMは、肉眼や光学顕微鏡では見えにくい細かな表面の様子を観察するための電子顕微鏡です。電子線を試料の上で細かく動かし、照射した場所から出てくる電子などの信号を画像にします。

例えば、破断した金属部品の断面に細かな模様があるか、樹脂製品の表面に微小な傷があるかを調べたいときに使います。得られる画像は信号の強さを明暗に置き換えたものです。SEM像の明るさを、そのまま「物質の色」や「元素の含有量」と読んではいけません。

電子源やレンズ、検出器などによって観察能力が変わります。装置名に「SEM」と書かれていても、すべての機種が同じ像を得られるわけではありません。根拠:JAIMA、日本電子

2. どんなときに使う?

製造・品質管理では、破損部の破面、微粒子や粉末の形状、表面の付着物、加工傷、コーティングの表面などを調べる候補になります。同じ材料を条件変更の前後で観察すれば、表面形態の違いを比較できます。ただし、画像の違いだけで原因や製品性能を断定することはできません。

向いている試料: 装置の試料室に収まり、観察中に形を保てる固体試料。金属やセラミックスのほか、条件を選べば樹脂、繊維、粉末、生物試料なども対象です。

準備が難しい試料: 水分や揮発成分を多く含むもの、真空中で変形・損傷しやすいもの、帯電しやすい絶縁体など。低真空モードやクライオSEMなど別の構成が役立つ場合がありますが、どの装置でも使える機能ではありません。根拠:日本電子

3. 分析には何が必要?

必要なもの 確認する点
観察対象の試料 目的の面が見える向き・大きさにする。必要なら切断、破断面の露出、断面研磨などを検討
試料台・固定材 ステージ上で試料が動かないように固定。導電性テープなどは用途に合わせる
前処理設備 絶縁体への導電性コーティング、乾燥、樹脂包埋などは必要性を判断して使用
電子光学系・真空系・検出器 電子線照射条件、真空度、作動距離、SE/BSEなどを試料に合わせる
画像保存・測定ソフト 倍率表示に加え、スケールバーと測定条件、試料位置を記録する
安全・維持管理 排気系、冷却・電源、試料交換の手順、コーティング装置の安全を確認する

粉末の飛散、磁性体の持ち込み、試料からのガス放出は機器によって問題になります。特に磁性体の取り扱いや試料重量の限界は機種ごとの規定を確認してください。EDS用のX線検出器はSEMに必ず付属するわけではありません。 根拠:日本電子の製品一覧

4. どんな仕組みで分析する?

  1. 電子銃で電子を発生させ、加速した電子線を電子レンズで細く絞ります。
  2. 電子線を試料の表面で順番に走査します。
  3. 照射位置から発生する二次電子や反射電子などの信号を検出します。
  4. 走査位置と信号の強さを対応させ、明暗のあるSEM像を作ります。
  5. 必要に応じて倍率・加速電圧・検出信号を変え、同じ位置を比較します。
SEMの観察の流れ。試料を試料室に固定し、上の電子銃から絞った電子線を表面に走査する。発生した二次電子・反射電子を検出し、走査位置ごとの強度をSEM像の明暗に変える模式図。
電子線で試料表面を走査し、二次電子・反射電子などの信号から像を作ります。真空条件や帯電対策は試料・機種により異なります。

二次電子像(SE像)は表面の微細な凹凸を把握するのに使われます。反射電子像(BSE像)は平均原子番号の違いなどによる組成コントラストを観察するのに利用されます。ただし、試料の傾きや装置条件なども画像に影響します。根拠:日本電子

5. 分析すると何が分かる?

SEM画像から、粒子の外観、表面の割れ・欠陥の位置、凹凸の違いなどを確認できます。スケールバーを確認し、画像の距離校正と観察条件が妥当であれば、画像上の長さや幅を求めることもできます。ただし、粉末の一部を撮った画像から母集団全体の粒度分布を判断するには、十分な視野数・抽出方法などが必要です。

二次電子像と反射電子像を比較した架空の模式画像。左は粒子の形状・段差・割れ、右は組成差などによる明暗に注目する。明暗は観察条件にも左右され、元素名や組成比を画像だけで確定できない。
SE像は主に表面形状、BSE像は組成差などによる明暗を観察します。元素名は像だけで確定できず、EDSは別構成です。架空の模式画像です。
画像・信号 読み取る手掛かり 注意点
SE像 表面の微細な凹凸、エッジ、形状 傾き・帯電・照射条件でもコントラストが変化
BSE像 平均原子番号差に由来する明暗など 明暗だけで元素名や組成比は決められない
EDS(追加構成) 特性X線を基にした元素情報 付属装置と標準試料・解析条件に依存。化合物の名前を確定する手段ではない

画像の明暗と形は、目的の観察位置、加速電圧、検出器、真空条件をセットで記録して解釈します。

6. 何が分からない?苦手なことは?

SEM像だけでは物質の化学式や元素の種類は確定できません。 EDSを付ければ元素分析ができますが、測定領域、元素の重なり、検出できる元素、試料表面の状態によって解釈が変わります。SEMとSEM-EDSを同じ機能として説明しないことが重要です。

次のような限界にも注意します。

  • 帯電: 絶縁体では画像が流れたり不自然に明るくなったりすることがあります。コーティングや低真空条件の検討が必要です。
  • 電子線による損傷: 樹脂などは照射で変形する場合があります。条件を下げると像の情報量も変化します。
  • 真空・乾燥の影響: 水を含む試料は変形する場合があり、処理後の形が元の状態を表すとは限りません。
  • 形状と高さ: SEM像の立体的な見え方だけで、正確な高さや体積を直接計測できるとは限りません。
  • 内部構造: 表面を観察しただけでは内部全体は分かりません。断面作製やTEM等が必要なことがあります。

7. 使用時の注意点と維持管理

  • 試料を先に確認: 含水・揮発・磁性・粉末飛散・大きさなどの制約を点検。密閉や高温処理による危険を避け、取扱説明書に従います。
  • 前処理の影響を記録: 導電性コーティング、洗浄、乾燥、断面処理が観察結果を変えないか確認します。
  • 観察条件の記録: 加速電圧、検出器、作動距離、倍率・スケールバー、試料位置を記録し、比較時はできるだけ揃えます。
  • 日常点検: 真空の立ち上がり、像の安定性、試料ステージ、画像校正などを所定の手順で確認します。
  • 安全: 高電圧部・真空系・可動ステージに触れない。試料交換・コーティング装置は各装置の手順を守ります。

維持費には定期点検、真空系の保守、消耗品、試料固定材、必要に応じてコーティング材料や検出器保守などが含まれます。個々の装置構成と使用頻度で異なるため、費用は一律には示せません。

8. 似た分析機器との違い

比較する機器 主に得られる情報 使い分けのポイント
光学顕微鏡 可視光による形状や色の観察 手軽な外観確認。より微細な表面形態が必要ならSEMを検討
SEM 表面付近の電子線由来の形態・信号 微細な形状を観察したいとき
SEM-EDS SEM像と特性X線を使った元素情報 異物の元素を知りたいとき。装置構成と分析条件を確認
TEM 薄い試料を透過した電子による構造情報 内部の微細構造などを詳しく見たいとき。試料調製が異なる
XPS 表面の元素・化学状態の情報 表面の元素状態や化学結合情報が必要なとき

SEMを選ぶ際は、「形が見たいのか」「元素も調べたいのか」「内部まで見たいのか」を先に分けると、必要な検出器や別の手法を決めやすくなります。

代表メーカー・現行機種

2026年10月30日に初回確認し、2026年10月31日に掲載機種名・メーカー公式URLを再照合しました。公式掲載は最新発売や現在の受注・在庫・販売継続を保証するものではありません。発売日と販売条件は未確認です。

メーカー 機種・構成例 掲載情報の位置付け 公式URL 公式掲載の限定確認日
日本電子 JSM-IT810 公式掲載の機種例。発売日・現在の販売条件は未確認 メーカー公式ページ 2026-10-30(限定確認)
日立ハイテク SU8600 公式掲載の機種例。発売日・現在の販売条件は未確認 メーカー公式ページ 2026-10-30(限定確認)

参考文献・出典

関連機器

表面形態の観察と元素分析を選び分けるときは、困りごとから分析方法を探すガイドと試料から探すガイドも参考にしてください。

  • IR/FTIR — 分子の結合や官能基を調べる方法

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