3行要約
液体クロマトグラフィーで成分を分離し、質量分析計でイオンを検出します。
複雑な試料中の対象成分を選択的に測る場合や、質量情報を併用した確認に使います。
質量電荷比が一致しても構造が確定するとは限らず、イオン化できない成分もあります。
| 機器名・略称 | 液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS) |
|---|---|
| 測定対象 | 適切なLC分離・イオン化で検出可能な対象成分とそのイオン |
| 試料例 | 前処理した食品・医薬・環境試料の抽出液、製品・原料溶液 |
| 結果の例 | クロマトグラム、マススペクトル(m/zと強度)、検量線・対象成分の定量値 |
1. どんな分析機器?
LC-MSは液体クロマトグラフ(LC)と質量分析計(MS)を組み合わせた装置です。LCで成分を分けた後、成分をイオン化して質量電荷比(m/z)に基づいて検出します。
LC-MSでは、LC分離による保持時間に加え、質量分析計で検出したイオンの質量電荷比(m/z)と信号強度を記録します。UV吸光度のデータが得られるのは、UV/PDA検出器を併用するなど、その測定に対応した装置構成の場合です。質量分析部やイオン化法の違いによって、検出できる成分と得られる情報は変わります。
2. どんなときに使う?
医薬品・代謝物・食品・環境成分など、混合物中の対象成分を確認・定量する場面で利用されます。異なる物質がHPLCの保持時間で重なりやすい場合も、m/zの違いが手掛かりになります。
成分が測定条件でイオン化しない、極端なマトリックス効果がある、使用移動相にMS非適合成分が多い場合などは条件を見直します。
3. 分析には何が必要?
前処理した試料溶液、測定対象に合うLCカラム、揮発性成分を中心としたMS適合移動相、標準物質・必要に応じた内部標準を準備します。LC部分にはポンプ・オートサンプラーなど、MS部分にはイオン源・質量分析部・検出器・真空系などがあります。
高濃度の不揮発性塩などはイオン源の汚れやイオン化抑制を起こすため、移動相・試料調製を検討します。電源・ガス・排気・廃液・真空系の条件は装置ごとの仕様を確認します。
カラム・分離方式の選び方
固定相と移動相に対する保持の差で分離する点はHPLCと同じです。ただしMSに導入するため、移動相添加剤・塩の揮発性、イオン化への影響、流量、カラム径と装置の接続条件も確認します。
4. どんな仕組みで分析する?
LCで分離した成分がイオン源に導入されます。イオン化法にはESIやAPCIなどがあり、目的成分・移動相によって使い分けます。得られたイオンは質量分析部でm/zにより分離され、電気信号に変換されます。
四重極、飛行時間型など質量分析部の方式やMS/MS機能の有無で、選択性・得られる情報が変わります。
試料調製・LC分離 → イオン化 → m/z別に分離・検出 → クロマトグラム・質量情報
5. 分析すると何が分かる?
LCクロマトグラム(保持時間と信号)とマススペクトル(m/zとイオン強度)が基本的な出力です。対象m/zの信号を抽出したクロマトグラムや、標準試料との比較で対象成分を評価します。
定量では標準液、内部標準、適切な検量範囲に加え、マトリックス効果、キャリーオーバー、回収率、イオン化条件を確認します。m/zが一致するだけで一意の同定とは限りません。
マススペクトルのm/zは、分子量と同じ?
マススペクトルでは横軸が「質量電荷比(m/z)」、縦軸がイオンの信号強度です。検出するのは中性分子ではなくイオンなので、ピークの数値をそのまま元の分子の分子量と読むことはできません。
例えばESIの正イオン測定では、分子Mにプロトンが付いた[M+H]⁺や、ナトリウムイオンが付いた[M+Na]⁺が観測されることがあります。負イオン測定では[M−H]⁻なども候補になります。多価イオンができる化合物では、電荷数も考慮して分子量を検討します。
どのピークが目的成分由来かは、イオン化法、保持時間、標準物質、同位体やMS/MSの情報などを組み合わせて考えます。異なる化合物のピーク強度だけを比べて含有量を決めることもできません。詳しくは島津製作所「イオン化と質量分離」を参照してください。
6. 何が分からない?苦手なことは?
構造異性体や同重体は、同じm/zが観測される場合があります。カラム分離やMS/MS、正確質量、標準品など、目的に応じた追加情報が必要です。
イオン化のしやすさは化合物・溶媒・マトリックスに依存し、信号が出ないことは成分がない証明ではありません。検出下限は装置方式・成分・前処理で変わります。
7. 使用時の注意点と維持管理
LC部分のカラム・配管・移動相管理に加え、イオン源の清掃、真空・ガス供給、チューニング、質量校正などが必要です。汚染・塩析・イオン化抑制・キャリーオーバーを確認します。
高電圧、加熱部、溶媒、ガス、真空系の作業はメーカーの安全指示に従います。消耗品・標準物質・イオン源の保守が運用費に影響します。
8. 似た分析機器との違い
HPLC-UV:吸光度で検出するため、質量情報を直接得ることはできません。LC-MS/MS:イオンをさらに選択・解離する構成で、選択性や確認情報が異なります。
GC-MS:揮発性・熱安定性が要求されるGCの分離とMSを組み合わせます。試料の気化適性とイオン化法が選定に関わります。
代表メーカー・現行機種
2026年10月28日に初回確認し、2026年10月31日にメーカー公式製品ページへの掲載を再照合した一例です。島津製作所「LCMS-2050」。公式掲載の確認であり、最新発売日や購入可否の確認ではありません。
参考文献・出典
- 島津製作所「LC-MSとは」(確認日:2026年10月28日)
- 島津製作所「各ユニットの原理」(確認日:2026年10月28日)
- 島津製作所「LCMS-2050」 製品公式ページ(確認日:2026年10月28日)
関連機器・兄弟サイトへのリンク
分離・検出の基本はHPLCの仕組みと結果の見方で確認できます。LC-MSではこれに質量電荷比(m/z)に基づく検出が加わります。
HPLCとLC-MSの検出原理や移動相の違いは似た分析機器の違いを比較するで整理しています。ピークが出ない、信号が弱いなどの一般的な切り分けの考え方は測定の困りごとから探すを参照してください。
最終検証日: 2026年10月31日(主要な科学説明・独自模式図・公式製品掲載情報を編集部で照合)。外部専門家による独立査読ではありません。製品の発売日や現在の受注・販売条件は未確認です。
.png)
