この記事で分かること(3行要約)
- GPC/SECは、溶液中での分子の大きさの違いを利用して分けるクロマトグラフィーです。
- 樹脂などの高分子について、分子量の平均値や分布を推定し、製造ロットの違いを比較できます。
- 出てきた分子量は測定法や校正の基準に左右されます。標準物質換算の値を、そのまま絶対的な分子量と考えないことが重要です。
機器名/略称: ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)/サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
何が測れるか: 適切な溶媒に溶解し、カラムの分離範囲に入る高分子などの溶出分布。検出器と解析法が適切であれば分子量分布・平均分子量
試料例: 可溶性の合成樹脂、ポリマー製品の原料、オリゴマー、水溶性高分子
測定結果の例: クロマトグラム、分子量分布曲線、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分散度(Đ = Mw/Mn)
代表的な利用場面: 樹脂の品質管理、重合条件の比較、劣化・分解による分布変化の確認
1. どんな分析機器?
GPC/SECは、樹脂のように分子の大きさがそろっていない試料を調べる分析法です。分子がどのような大きさの集まりで構成されているかを、溶液として分離しながら確認します。
SECはサイズ排除クロマトグラフィーという分離方式の総称です。合成高分子を有機溶媒で測る方法をGPCと呼ぶことが多く、水系でタンパク質や水溶性高分子を扱うときはSEC、ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)という呼び方も使われます。実際の装置構成や溶媒は用途ごとに異なります。
例えば、同じ種類の樹脂でも分子量分布が異なると、加工性や製品の性質が変わることがあります。GPC/SECは、その違いを数字や分布として比較するのに役立ちます。根拠:島津製作所
2. どんなときに使う?
製造現場の例では、同じ銘柄の樹脂でもロットごとに加工性が違う場合に、分子量分布を比較する用途が考えられます。重合条件の変更前後、加熱や使用によって生じた分解の影響を調べる研究にも利用できます。ただし、GPCの結果だけで異常原因を断定できるわけではありません。
向いている試料は、分析に使う溶媒へ十分に溶け、ろ過や調製の間に変質しにくい高分子などです。水系で測るタンパク質などでは、分離条件によって高次構造や会合状態が結果に影響することがあります。
注意したい試料は、不溶性の架橋樹脂、溶媒中で凝集する試料、溶解に強い加熱が必要で分解しやすい試料です。溶けない部分は通常の溶液GPCでは測定対象に入りません。高温GPCなど別構成が必要になる場合があります。根拠:Waters
3. 分析には何が必要?
| 準備するもの | 用途と注意点 |
|---|---|
| 試料と適切な溶媒 | 試料が溶け、カラム・配管・検出器と適合することを確認する |
| ポンプ、注入装置、カラム、検出器 | 安定した送液と試料に合う分離・検出を行う |
| GPC/SEC用カラム | 対象とする分子サイズの範囲に合う細孔径・分離範囲を選ぶ |
| 標準物質 | 従来法では分子量既知のポリマーを使い、溶出位置と分子量の関係を校正する |
| フィルター・バイアル等 | 不溶物の持ち込みを抑える。ただし、ろ過で高分子成分を失わないか確認する |
| 温度管理・安全設備 | カラム温度、溶媒の引火性・有害性、排気・廃液回収を管理する |
検出器としては示差屈折率(RI)検出器がよく使われます。RI検出器は応答を記録するもので、それだけで絶対分子量が決まるわけではありません。対象成分や目的に応じてUV、光散乱、粘度検出などを組み合わせる構成もあります。光散乱法で分子量を評価するときには、測定条件や濃度・屈折率増分(dn/dc)など、追加の情報が必要になる場合があります。根拠:Waters
4. どんな仕組みで分析する?
- 試料を移動相として使う溶媒に溶かし、装置に注入します。
- 試料溶液が細かい穴(細孔)を持つ充填剤の入ったカラムを流れます。
- 溶液中で大きい分子ほど細孔の中に入りにくく、早く溶出する傾向があります。小さい分子は細孔へ入りやすく、通過に時間がかかります。
- カラムから出た成分を検出器が記録し、クロマトグラムが得られます。
- 校正に使った標準物質や検出器の情報に基づき、分子量分布を解析します。

この方法の分離基準は、分子量そのものではなく溶液中の有効な分子サイズです。同じ分子量でも分岐の程度や高分子の形、使う溶媒が変われば溶出位置が変化し得ます。また、充填剤への吸着などサイズ以外の相互作用があると、期待どおりの分離になりません。根拠:Waters
5. 分析すると何が分かる?
クロマトグラムの横軸は溶出時間または溶出容量、縦軸は検出器の応答です。一般に、大きな分子サイズの成分は早い位置に、小さな成分は遅い位置に現れます。校正を行うことで、分布を分子量の目盛りに換算します。

| 指標 | 何を表す? | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| Mn(数平均分子量) | 分子の個数で重み付けした平均 | 低分子量側の成分の影響を受けやすい |
| Mw(重量平均分子量) | 分子の質量で重み付けした平均 | 高分子量側の成分の影響を受けやすい |
| Đ(分散度、Mw/Mn) | 分子量分布の広がりを表す一つの指標 | 同じĐでも分布の形が同じとは限らない |
| 分布曲線 | 高分子量側・低分子量側の存在や変化 | 試料・検出器応答・校正方法で見え方が変わる |
標準物質換算の分子量に注意してください。 ポリスチレン標準などを使った一般的な相対校正では、「その標準物質に換算した分子量」が求まります。異なる構造の高分子について、絶対分子量としてそのまま解釈してはいけません。光散乱検出器などを組み合わせれば別の評価が可能ですが、測定条件や解析の妥当性確認が必要です。根拠:Waters FAQ
6. 何が分からない?苦手なことは?
GPC/SECの分布だけでは、高分子の化学構造や不純物の名称は決まりません。別の種類の高分子や添加剤が同じ時間帯に溶出する場合もあります。材質の確認にはIR、NMRなど、目的に合う分析法を組み合わせることがあります。
また、以下の条件では結果を慎重に扱います。
- 試料が十分に溶けておらず、測りたい成分の一部が試料液に入っていない。
- カラムの測定範囲を外れ、異なる大きさの分子が十分に分離できない。
- 吸着やイオン性相互作用など、サイズ以外の要因で溶出時間が変わる。
- カラム内でのせん断や試料調製中の劣化によって、元の分子量分布が変わる。
「ピークが大きいから高分子が多い」という判断にも注意が必要です。検出器の信号と試料中の質量の関係を確認してから比較します。
なお、タンパク質などの生体高分子では、溶出位置だけから未知試料の分子量を一意に決められません。同じ分子量でも溶液中での形や会合状態が異なれば、カラム中での振る舞いが変わるためです。分子量を求める場合は、対象に合った標準物質や検出器・検証方法を別途確認します。根拠:Waters公式サポート
7. 使用時の注意点と維持管理
- 試料調製: 溶解条件を一定にし、不溶物を確認します。フィルターの材質・孔径による成分ロスにも注意します。
- 条件の再現性: カラム温度、流量、溶媒組成を管理します。RI検出器は温度や移動相の変化に敏感です。
- 装置管理: 送液圧力、流路の漏れ、溶媒残量、ベースライン、標準物質の溶出を点検します。急な圧力変化は原因を確認します。
- カラム保護: カラムごとの使用可能溶媒、圧力、温度、洗浄・保管液を守ります。溶媒を変更するときは互換性と置換手順を確認します。
- 安全: THFなど引火性の溶媒を使用する場合は、SDSと設備の規則を確認します。高温GPCでは加熱部の取扱いにも注意します。
維持費には溶媒、カラム、フィルター、バイアル、標準物質、廃液処理、点検が含まれます。具体的な金額はシステムと稼働状況によって変わるため、一律の数字は記載しません。
8. 似た分析機器との違い
SECは液体クロマトグラフィーで利用される分離モードの一つです。次の比較は、主な分離目的の違いを示します。
| 機器 | 主に何を見るか | 使い分け |
|---|---|---|
| 逆相HPLCなど(相互作用を利用する分離) | 成分の保持特性の違いによる分離 | 低分子成分の定量や不純物管理など、分析対象に応じた分離モードを選ぶ |
| GPC/SEC | 溶液中での分子サイズによる分離 | 高分子の分子量分布や会合状態などを調べたいときの候補 |
| 粘度計 | 液体の流れにくさ、粘度 | 分子量分布を直接示すわけではなく、物性評価の補完に使う |
| IR/FTIR | 結合・官能基に関する赤外吸収 | 材質や化学構造の手掛かりが必要なときに組み合わせる |
装置を選ぶときは、試料の溶解性、測りたい分子量範囲、必要な精度、求める分子量が相対値でよいか、必要な検出器を先に確認します。
代表メーカー・現行機種
2026年10月30日に初回確認し、2026年10月31日に掲載機種名・メーカー公式URLを再照合しました。公式掲載は最新発売や現在の受注・在庫・販売継続を保証するものではありません。発売日と販売条件は未確認です。
| メーカー | 機種・構成例 | 掲載情報の位置付け | 公式URL | 公式掲載の限定確認日 |
|---|---|---|---|---|
| 島津製作所 | GPCシステム(構成例) | 単独の機種型番ではなく、GPC測定用システムの製品紹介・構成例。発売日・現在の販売条件は未確認 | メーカー公式ページ | 2026-10-30(限定確認) |
参考文献・出典
- [出典1] https://www.an.shimadzu.co.jp/service-support/technical-support/analysis-basics/hplc/faq/example/lctalk-55intro/index.html
- [出典2] https://www.an.shimadzu.co.jp/service-support/technical-support/analysis-basics/hplc/faq/principle1/sec/index.html
- [出典3] https://www.waters.com/nextgen/jp/ja/education/primers/beginners-guide-to-size-exclusion-chromatography.html
- [出典4] https://www.waters.com/nextgen/jp/ja/education/primers/beginners-guide-to-size-exclusion-chromatography/gpc-basic-chemistry.html
- [出典5] https://www.waters.com/nextgen/jp/ja/education/primers/beginners-guide-to-size-exclusion-chromatography/frequently-asked-gpc-sec-questions.html
- [出典6] https://www.an.shimadzu.co.jp/products/liquid-chromatography/hplc-system/gpc/index.html
- [出典7] https://support.waters.com/KB_Chem/Columns/WKB228431_Can_I_use_SKU_186006519_to_create_a_calibration_curve_onSKU_186006505
関連機器
分子量分布と成分分析の違いを整理するには、分析機器の比較ガイドと目的から分析機器を探すガイドを参考にしてください。
- HPLC(高速液体クロマトグラフィー) — 一般的な分離方法や検出器との違い
- 粘度計 — 流動性・粘度の測定に適した手法
- IR/FTIR — 分子の結合や官能基を調べる手法

