GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)とは?仕組み・用途・結果の読み方を解説

GCで試料を気化・分離し、接続部を経てMSの真空中でイオン化、質量分析、検出する流れ。検出後の電子信号からTICとマススペクトルを表示する構成例。 分離・成分分析

この記事で分かること(3行要約)

  • GC-MSは、GCで分離した成分を質量分析計で調べ、成分の種類を推定したり量を測ったりする装置です。
  • 揮発性のある化合物や、適切な前処理をした試料の分析に向いています。熱に弱い物質などは測定法を選ぶ必要があります。
  • クロマトグラムと質量スペクトルの両方を読むことで、GC単独より多くの情報が得られます。ただし、ライブラリ検索だけで成分名が確定するわけではありません。

機器名/略称: ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS、GC/MS)

何が測れるか: GCに導入・分離でき、選択したイオン化法・質量分析部で測定できる成分

試料例: 有機溶剤混合物、抽出した香気成分、前処理した環境試料

測定結果の例: 全イオン電流クロマトグラム(TIC)、抽出イオンクロマトグラム(EIC)、質量スペクトル、標準物質に基づく定量値

代表的な利用場面: 原料確認、異物・異臭原因の調査、残留溶媒や環境汚染物質の分析

1. どんな分析機器?

GC-MSは、混ざっている成分を分けるガスクロマトグラフ(GC)と、成分をイオンにして質量と電荷数の比(m/z)に応じて調べる質量分析計(MS)を組み合わせた装置です。

GCで成分が時間差で出てきたところをMSが測るため、同じ時間帯に得られたイオンの情報から成分を絞り込めます。GCだけで保持時間を比べる場合より、成分を推定する材料が増える点が特徴です。

ただし、GC-MSという名前だけで検出範囲は決まりません。注入口、カラム、イオン化法、質量分析部、測定モードなどの組み合わせによって結果が変わります。

2. どんなときに使う?

製造現場では、製品から普段と異なるにおいがするときの原因候補の探索や、原料に微量の揮発性不純物が含まれていないかの確認などに活用できます。測定条件に応じて、食品の香気成分や環境中の有機汚染物質の分析にも利用されています。

向いている例: 気化させてカラムから溶出でき、装置内で大きく分解しない成分。液体・気体だけでなく、適切な抽出やヘッドスペース法を利用した試料も候補です。

苦手な例: 高温で分解しやすい成分、GC条件で気化・溶出しにくい成分、前処理で失われやすい成分。対象によってはLC-MSなどの別手法を検討します。

3. 分析には何が必要?

準備するもの 役割と確認点
GC-MS本体、カラム、導入部 対象試料に合う注入方法と分離条件を決める
キャリアガス、ガス供給設備 適切なガス純度・流量を維持し、漏れに注意する
真空系、イオン源、質量分析部 真空状態とイオン化・測定条件を装置手順に従って管理する
試料容器、シリンジ、前処理器具 揮発・吸着・汚染、試料の持ち込み量を抑える
標準物質、ブランク、必要に応じて内標準 成分確認と定量、持ち込み汚染の判定に用いる
安全設備、SDS、廃液容器 溶剤・加熱部・ガス・真空装置の安全管理を行う

質量スペクトルのデータベースは未知ピークを調べる助けになりますが、登録物質が限られることと、測定条件によってスペクトルが変わることに注意します。

4. どんな仕組みで分析する?

  1. 試料をGCに導入し、対象成分を気化させるなどしてカラムへ送ります。
  2. GCカラムが成分を時間差で分離します。
  3. カラムから出た成分がMSのイオン源に入り、電子イオン化(EI)などでイオンになります。
  4. 質量分析部でイオンをm/zに応じて分け、検出器が信号を記録します。
  5. データ処理装置がクロマトグラムや質量スペクトルを表示します。

分析の流れ: 試料 → GCの注入口 → カラムで分離 → MSでイオン化 → m/z別に測定 → データ解析

GCで試料を気化・分離し、接続部を経てMSの真空中でイオン化、質量分析、検出する流れ。検出後の電子信号からTICとマススペクトルを表示する構成例。
GCカラムで分離した成分をMSでイオン化し、m/zに応じて分離・検出します。代表的な構成の模式図で、分析条件によって構成は異なります。

一般的なEI法では、イオン化時に分子が複数の断片(フラグメント)に分かれることがあります。その並び方が成分の候補を考える手掛かりになります。イオン化法には化学イオン化(CI)などもあり、得られるスペクトルは同じとは限りません。

SCANとSIMは目的に応じて選ぶ

四重極型GC-MSの代表例では、SCAN(スキャン)は設定したm/z範囲を繰り返し測り、成分候補を調べるためのマススペクトルを得ます。SIM(選択イオンモニタリング)は対象に合わせて選んだm/zを重点的に測り、既知成分の微量定量などに使います。SIMだけではSCANと同じ広範囲のスペクトルは得られず、選択外イオンの情報は確認できません。保持時間、妨害、標準物質も合わせて判断し、どちらのモードも単独で同定を保証するとは考えないでください。利用できるモードは装置構成によります。根拠:島津製作所「スキャンモードとSIMモード」

5. 分析すると何が分かる?

代表的な結果は、時間ごとのイオン信号を示すクロマトグラムと、あるピークの質量スペクトルです。クロマトグラムでは成分がいつ出てきたかを、質量スペクトルではどのm/zのイオンがどの程度観測されたかを読みます。

TICの選択した時点の1スキャンからマススペクトルを読む模式図。TICの横軸は保持時間、マススペクトルの横軸はm/z。TICは同じスキャンの各m/z信号強度の合計。
TICはイオン信号の時間変化、マススペクトルはm/z別の信号です。ライブラリ一致だけで化合物は確定できません。架空のデータです。
データ 読み取ること 注意点
TIC(全イオン電流クロマトグラム) 測定範囲のイオン信号を合計した時間変化 すべての物質を等感度で表すわけではない
EIC(抽出イオンクロマトグラム) 選んだm/zの信号の時間変化 同じm/zを持つ別成分の影響があり得る
質量スペクトル 観測されたイオンのm/zと相対的な強さ ライブラリ一致率だけで成分を確定しない
標準物質による定量 検量線などに基づく対象成分の濃度 前処理回収率、マトリックス効果、測定範囲を確認する

例えば未知ピークをライブラリ検索すると、候補化合物が複数表示される場合があります。標準物質の保持時間やスペクトル、試料の由来、別の分析条件を合わせて判断します。

6. 何が分からない?苦手なことは?

GC-MSにも、ピークの情報だけでは成分を一意に決めにくい場合があります。似たスペクトルを示す異性体や、共溶出した複数成分、ライブラリに登録されていない物質などが例です。イオン化法によって分子イオンがほとんど見えず、分子量をそのまま読み取れないこともあります。

また、測定対象が存在していても、前処理で失われた、GC条件で溶出しなかった、イオン化されにくかった、検出可能な範囲を下回ったなどの理由で検出できないことがあります。

「未知ピークが出た」という事実と「その物質が確定した」という結論は区別しましょう。

7. 使用時の注意点と維持管理

測定前に標準物質・ブランクで装置の状態を確認します。ベースラインや保持時間、対象イオンの応答が普段と異なる場合は、試料調製、注入部、カラム、イオン源などの順に原因を切り分けます。

  • 汚染対策: 高濃度試料の直後はキャリーオーバーに注意し、ブランクで残留を確かめます。
  • 日常管理: ガス供給、真空状態、リーク、温度、チューニング結果などを装置マニュアルに従って点検します。
  • 消耗品・保守: セプタム、ライナー、カラム、イオン源の汚染などは分析性能に影響します。交換・洗浄は原因とメーカー手順を確認してから行います。
  • 安全: 高温部のやけど、可燃性溶媒、ガス漏れ、真空系の取扱いに注意します。保守時は装置ごとの停止・冷却・復帰手順に従います。

8. 似た分析機器との違い

機器 主な違い 選ぶときの考え方
GC(FIDなど) GCで分離した成分を検出器の信号として記録 分析対象と必要な同定情報、感度、コストで比較
HPLC 液体移動相で分離する 熱で分解しやすいなどGCに向かない試料の候補になる
LC-MS LCで分離した成分を質量分析する イオン化しやすさ、移動相の条件、対象物の性質で使い分ける
GC-MS/MS イオンをさらに選択・断片化して測る方式を利用 妨害物の多い試料で高い選択性が必要な場合に検討

分析機器を選ぶときは、まず対象成分がGCで適切に分離できるかを確かめ、次にどの程度の同定情報と定量性能が必要かを整理します。

代表メーカー・現行機種

2026年10月30日に初回確認し、2026年10月31日に掲載機種名・メーカー公式URLを再照合しました。公式掲載は最新発売や現在の受注・在庫・販売継続を保証するものではありません。発売日と販売条件は未確認です。

メーカー 機種・構成例 掲載情報の位置付け 公式URL 公式掲載の限定確認日
島津製作所 GCMS-QP2050 公式掲載の機種例。発売日・現在の販売条件は未確認 メーカー公式ページ 2026-10-30(限定確認)
日本電子 JMS-T2000GC AccuTOF GC-Alpha 2.0 公式掲載の機種例。発売日・現在の販売条件は未確認 メーカー公式ページ 2026-10-30(限定確認)

参考文献・出典

関連機器

ほかの分離・同定法との使い分けは、分析機器の比較ガイドと分析で困ったときのガイドで整理できます。

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